日本旅館協会が8日に開いた理事会では、大阪府北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など、今年に入って相次いだ自然災害への対応などが報告された。
北原会長
北原会長は「被災地域の方々には心よりお見舞い申し上げたい。7~10月は多くの地域で国内客、インバウンド客を問わず前年から稼働率が落ちていると聞いている。東京オリンピック・パラリンピックなどに向けて、右肩上がりの成長を目指せるよう協会としても復興に取り組んでいきたい」と述べた。
続いて西日本豪雨、北海道胆振東部地震に見舞われた地域の支部連合会長が災害対応の経験などを紹介し、防災対策、復興などに関して提言した。
広域的な災害で損害把握に苦慮 西日本豪雨
副会長、中国支部連合会長の永山久徳氏(岡山県・鷲羽山下電ホテル)
西日本は相次いで災害に見舞われた。広域の災害ということで当初苦慮したのは、国や自治体に対し、われわれがどれくらいの損害を受けているのか、表現する方法が意外に少ないということだ。キャンセルや被害額の調査、推計にしても、施設や地域によって捉え方が違う。キャンセルでは実際の被害だけを集計した地域、減収見込みを含めて計上した地域があったり、単価も宿泊料だけの地域、総消費で出した地域があったりした。こうした事前の基本的な準備ができていなかったことは反省点だ。
災害に対しては皆さんにご心配いただき、国などの支援も早かったが、風化も早かった。北海道胆振東部地震の発生以降は、西日本の復興支援はもう終わったというようなイメージも付いてしまった。7、8、9月と少しずつ前年比の落ち幅が小さくなったが、10月にまた落ち込むような状況もあったので、こうした状況も行政などにしっかりと伝えていきたい。
行き場ない客も安全確保に課題 北海道胆振東部地震
副会長、北海道支部連合会長の浜野浩二氏(定山渓グランドホテル瑞苑)
地震、ブラックアウトの発生に際して反省すべきは、札幌市のインバウンド客を中心に泊まるところがないお客さまが数千人出てしまったこと。宿泊施設では停電の中で入ってもらえるだけのお客さまを受け入れたり、炊き出しをしたりするところがあった半面で、大変恥ずかしい話だが、シャッターを下ろしてお客さまを受け入れないという残念なところもあった。これは大きな反省材料だ。
宿泊業への風評被害では、地域間の差はあるが、9月が30%減、10月が15%減といったところで、「北海道ふっこう割」で10月以降、昨年並みに回復するかどうかという状況だ。被害状況の調査では、若手を中心に迅速に詳細なデータをまとめることができた。熊本地震を経験した鶴田さん(浩一郎氏、九州支部連合会長)らにはいろいろと助言してもらい、大変に勉強になった。
国への支援要望では、北海道の場合、10月を過ぎると観光のオフシーズンに入ってしまうので、早期に対策を実施する必要があった。何とか稼げる最後の月の10月に間に合うよう、時間がかかる補正予算ではなく、予備費での対応をいろいろなチャネルでお願いした。北原会長をはじめ協会にもお世話になり、行政も理解してくれ、「北海道ふっこう割」などに約100億円が投じられたことは有り難かった。ただ北海道は広く、オフシーズンも長いので、新たな手立ても考えていく。